「うちの子、どうしてこんなに成績が悪いんだろう…」
「私の関わり方、間違ってたのかな?」
中学生の成績がふるわないと、つい親は自分を責めたり、逆に子どもを責めてしまったりしがちです。
でも本当に必要なのは、「今、子どもに何が起きているのか」「どこで何につまずいているのか」を冷静に見つめること。
この記事では、塾講師として・親として多くの中学生を見てきた経験から、
成績が伸びない子に共通する“落とし穴”と、そこに親がどう関わるべきかを具体的にお伝えします。

子どもの成績が悪い…親はどう受け止めるべきか
中学生の成績不振には、実は“時期的な特徴”があります。
「いつから、どこで、なぜつまずいたのか」がわかると、対応の仕方も大きく変わってきます。
私自身、塾でたくさんの親子と接してきて感じたのは、
「成績が悪くなる理由は性格や家庭環境だけではなく、“時期ときっかけ”に大きく左右される」ということ。
ここでは、特につまずきがちな4つの時期に注目し、それぞれの背景と親の視点を整理していきます。
中1の1学期:最初からつまずいている子は要注意
入学してすぐのこの時期、実は最も見逃されやすく、最も重要です。
勉強ができない子の多くは、中1の最初からすでに「わからない」が始まっていることがあります。
これはつまり、小学校の内容が定着しないまま中学に入ってしまったケースが多いということ。
特に英語や数学でその傾向は顕著です。
この段階で「まだ始まったばかりだから様子を見よう」と思って放置してしまうと、2学期にはさらに取り戻しづらくなります。
中1の1学期のテスト結果や家庭学習の様子は、しっかり見ておくことが重要です。
中学に入ってすぐの注意点や、家庭学習の始め方については、こちらの記事で詳しく解説しています
中1の後半:“慣れ”による中だるみの始まり
最初はついていけていた子でも、だんだん気がゆるみ始めるのがこの時期。
授業のペースにも慣れ、「まあなんとかなるか」と油断が出てくるタイミングです。
ここで点数が下がっても、まだ取り戻せる可能性は十分あります。
親としては、「やっぱりダメなんだ」と諦めたり、「ちゃんとしなさい!」と責めたりするのではなく、
「ちょっと疲れてきたのかな」「慣れて気が緩んでるのかも」と捉えて、しばらく様子を見ながら支える姿勢を取るのが◎。
中2:中だるみ+学力の差が出始める時期
この時期は誰もが気を抜きやすく、でも実は非常に大事な期間です。
部活も本格化し、友人関係も安定してきて、学校生活が楽しいと感じる子が多い時期でもあります。
ただし、中2の学習内容はぐっとレベルが上がり、入試に直結する単元も増えるので要注意。
特に数学・英語・理科で「難しくなった」と感じる子が増えます。
この時期に完全に学習習慣が抜け落ちてしまうと、中3での巻き返しは厳しくなります。
だからこそ、英検などの検定の受験や、高校見学などで“受験を意識させる”工夫をしておくと◎。
中2の学習について詳しい記事はこちら
中3の夏:現実が見えてくる、だからこそ戦略を立て直す時期
中3の夏は「ここから頑張ればなんとかなる!」と思いがちですが、実際にはある程度結果が見えてくる時期でもあります。
ここから成績が劇的に伸びる子もいる一方で、「間に合わなかった」となるケースも現実にあります。
ただ、だからといって投げ出すのは違います。
内申点、模試、英検…できることを一つひとつ積み上げて、志望校との“現実的な距離感”を測りながら判断することが大切です。
中3の夏についてはこちらの記事に詳しく書いてあります
そして、忘れてはいけないのは「高校はゴールではない」ということ。
高校で初めて勉強に目覚める子、部活や人間関係で自信をつける子もたくさんいます。
その子に合った学校を見つけて、楽しく通える場所を選ぶこと。
そして何より、「あなたなら大丈夫」と信じて見守る親の姿勢が、子どもの未来にとって最大の支えになります。
まず冷静にチェックしたい“今の状況”

成績が悪い…と一口に言っても、そこにはさまざまなタイプと段階があります。
親がやみくもに焦ったり不安になったりせず、いまの子どもの状態を冷静に見きわめることが第一歩です。
- 定期テストの点数の傾向(回を追うごとに下がっている?特定教科だけ?)
- 提出物や宿題の状況(出している?抜けている?)
- 授業態度やノート(書いているか、板書しているか)
- 生活リズム(起床・就寝・スマホ時間)
- 学校への気持ち・ストレス(友人関係・先生への信頼)
家庭内で無理なく見られる範囲で、まずは事実を知ること。
そのうえで「どう対応するか」を考えれば、気持ちも少し落ち着きます。
成績が悪い中学生に、親が“やるべきこと”5選
成績が思うように伸びない中学生に対して、親としてできることはたくさんあります。
ただし、それは“全部やる”ではなく、子どもの状態や家庭環境に応じて選び取っていくことが大事。
ここでは、現実を踏まえたうえで親が意識したい「やるべきこと」を5つに整理してお伝えします。
① 現実を共有し、“ゴールまでの距離”を一緒に把握する
まずやるべきは、「いまの成績がどれくらい志望校から離れているのか」を一緒に確認することです。
漠然と「ヤバい」「なんとかしないと」ではなく、内申点・偏差値・英検の有無など、具体的な数字で現状を見える化してあげること。
ここで重要なのは、“追いつけそうかどうか”を親の主観だけで判断しないこと。
塾や学校の先生の意見、模試の結果などを活用して、客観的な情報で判断しましょう。
子ども自身も「あと何点あればいいのか」がわかれば、ただ不安になるより前向きに動き出せる可能性が高まります。
② 小さな成功体験を積ませる仕組みを作る
子どもが「できない」と感じているときほど、小さな“できた”を積み上げることが最優先です。
たとえば:
- 提出物を期限内に出せたら一緒にカレンダーに○をつける
- 毎日英単語5個だけ覚える → テストする → 成功率が上がったら褒める
- 1日10分のリビング学習 → 続いたら好きな飲み物を用意する など
大きな目標に圧倒されて何もできなくなるよりも、「これならできそう」があるだけで前に進みやすくなります。
家庭の中に“ちょっと頑張れる仕組み”を取り入れてみましょう。
③ 家庭内で勉強しやすい“空気”をつくる
勉強が苦手な子ほど、「勉強モードに入るまでのハードル」が高いものです。
そのため、家庭内で“なんとなく勉強しやすい雰囲気”をつくってあげるのは親にできる大きなサポートの一つ。
具体的には:
- リビングに教材や参考書を置いておく(勉強に自然と目が向く)
- テレビやスマホのルールを家族で共有する(集中を妨げない)
- 親も横で何か作業をする(“勉強だけさせられている感”を薄める)
強制せずに“場”を整えることで、子ども自身が動きやすくなる環境づくりを意識しましょう。
家庭学習について詳しい記事はこちら
④ 無理に教えようとせず、サポート役に徹する
「教えて」と言われてもうまく教えられなかったり、逆に「わかんないの!?」と感情的になってしまったり…
親子で勉強するとぶつかりやすいのは当たり前です。
だからこそ、親は“教える人”ではなく“支える人”でOK。
たとえば:
- 「今日は何をやる予定?」とスケジュールを聞くだけ
- 解説動画を一緒に探す
- 教材やプリントの整理を手伝う
- 「今日の範囲だけでもやってみようか」と声をかける
子どもが“やり方”や“順番”に迷っている場合は、そこを手助けするだけでも十分サポートになります。
親のサポートの仕方についてはこちらの記事を参考にしてください
⑤ 親自身も“冷静さ”を保つために情報を集めておく
子どもが成績不振にあると、親も不安や焦りに飲み込まれがちです。
でもそんなときこそ、親が冷静であることが家庭の安心感を生みます。
そのためにできること:
- 高校入試制度(内申点の仕組み・推薦の条件など)を調べておく
- 模試の見方や偏差値の意味を知っておく
- 学校・塾の先生に相談してリアルな現状を聞いておく
「知らないから不安」になっていることも多いので、親が先に情報を整理しておくと、子どもに対する対応もブレにくくなります。
逆効果になりやすい“やらなくていいこと”4つ

「なんとか成績を上げてほしい」という気持ちから、つい焦ってしまったり、言いすぎてしまったり。
でも、親の行動が“逆効果”になってしまうことも実は少なくありません。
ここでは、親がついやってしまいがちな“やらなくていいこと”を4つに整理してお伝えします。
①「なんでこんな成績なの?」と責める・比べる
これは多くの家庭で起こりがちなことですが、子どもにとって最もダメージが大きい言葉です。
- 「昔の私の方が成績良かったよ」
- 「こんな点数でどうするの?」
→これらは、本人がすでに「やばい」と思っているほど、心を閉ざすきっかけになります。
子どもにとって必要なのは、「責められること」ではなく、
現状を一緒に見て、次に何をするかを一緒に考えてくれる存在です。
② 親がすべてを管理・指示しようとする
- 「今から30分勉強!終わったら次はこれ!」
- 「なんでその順番でやるの?こっちが先でしょ!」
…と、親がすべてを決めて動かそうとすると、子どもは“勉強=命令されるもの”と感じてしまいます。
もちろん必要なサポートは大切ですが、「自分で考えて動ける余白」も同じくらい大事。
親は「環境を整える・つまずいたときに相談に乗る」くらいの立ち位置がベストです。
③ 「勉強しなさい」だけ言い続ける
「勉強しなさい」と言っても、何をどうしたらいいかわからない子にはまったく響きません。
特に、勉強に苦手意識を持っている子は、その言葉を聞くだけでプレッシャーを感じてしまいます。
重要なのは、「なにを」「どうやって」「どれくらいやればいいか」を具体的に整理すること。
それがわからない子には、“取り組みやすい小さなステップ”を提示してあげることが有効です。
④ 親の理想像を押しつけようとする
「もっとちゃんとすれば」「私が子どものころはこうだった」
そんな“理想の子ども像”を押しつけることで、親子の関係がぎくしゃくすることも多いです。
もちろん「もっと頑張ってほしい」という願いがあるのは当然ですが、
それは親の“思い通り”になってほしいという気持ちと紙一重。
特に思春期の中学生にとっては、「自分を否定された」と感じやすいタイミングでもあります。
理想よりも、“今の子どもをどう支えるか”に目を向けることが、最も現実的なサポートです。
まとめ|親の役割は“支配”ではなく“伴走”
中学生の成績が思うように伸びないとき、親としては不安や焦りでいっぱいになるものです。
でも、だからこそ一歩引いて、冷静に状況を整理し、今できることを見つけていく姿勢が何よりも大切です。
勉強は、怒っても命令しても思うようには進みません。
子どもが前を向いて動き出すために必要なのは、「ちゃんと見てもらえている」「否定されない」「信じてもらえている」という感覚です。
親が“やるべきこと”は
- 現実を一緒に見て、ゴールまでの距離を把握すること
- 小さな成功体験を積ませる“仕組み”を家庭に取り入れること
- 勉強しやすい空気をつくること
- 教えるより、支えるスタンスをとること
- 親自身が冷静さを保つために情報を整理しておくこと
一方、“やらなくていいこと”は
- 責めたり、他人と比べたりすること
- すべてを親が管理しようとすること
- 「勉強しなさい」と繰り返すだけの関わり
- 理想の押しつけや、過度な期待を前提にすること
子どもの成績や受験の結果に一喜一憂してしまうのは自然なこと。
でも、「勉強は家庭での信頼関係のうえに成り立つもの」だということを、忘れないでください。
親の役割は、コントロールすることではなく、一緒に“どう進むか”を考えていく伴走者。
成績が悪い今だからこそ、その信頼と土台が試される時期なのかもしれません。
焦らず、でも諦めず。
親の冷静な一歩が、子どもの未来に必ずつながっていきます。